2011年 04月 12日 ( 1 )

各大洲の説明に入る前に南北両極や赤道や熱帯・寒帯の区別、緯度経度などについて書かれています。
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下の掲載画像は原図でいうと右側の半球のすぐ上、小さな三重の丸が認められると思いますが、その部分を転写したものです。見たところ、どうも天動説の立場で説明しているようです。このページ以降、2ページに亘って南北両極地方の昼夜の区別、北極星の高度などが記載されています。
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地誌は「亜細亜」から始まり、「亜弗利加」「欧邏巴」「北亜墨利加」「南亜墨利加」と続き、「墨瓦臘泥加」「智里国」で終っています。「亜弗利加」では「一曰利未亜ト古称ナルベシ」と添え書きがあり、「利未亜」にリミヤと読みがふられています。

また、「墨瓦臘泥加」と「智里国」は、それぞれ「メガラニカ」「ギリ」と振り仮名付きです。「メガラニカ」は南極近くに今だ知られていない大きな大陸があるのではないかという推測のもとに名付けられた架空の大陸で、当時、南極大陸の一部と思われたフエゴ島を発見したフェルディナンド・マゼラン (Magallanes)にちなんでいます。

ギリ国についてはよくわかりませんがニュージーランドのことでしょうか。(全くの思いつきです。)原図の地図を見るとオーストラリアの一部が南極地方の巨大大陸と繋がっていてさらに南極に近いところに「南極夜国」「墨瓦臘泥加」と記入され、その巨大大陸の海岸線をたどって行ったところに「智里国」の記入があります。「智里国」の文字の近くには「テルラデスエタツト称ス」と書き込まれています。

智里国の説明文は三行で終っていますので全文を書き写します。

「未詳地 西北ニサシ出タルヲ新人謁蘭垤亜ト云「テルラデスエタツ」トモ云 東ノ一島ヲ「ダラカ」ト云人初テ見ル 凡ソ此際ノ諸島 西洋人タマタマ見ル所ヲ記ス」

新人謁蘭垤亜は、「のーハセーランデヤ」と振り仮名が付いています。「のーハ」は、「ノヴァ(新)」で「諾髪(のーハ)」と表記された地名も南北アメリカの説明部分で数ヶ所散見されます。

橋本伯敏は大槻玄沢に蘭学を学んでいますが、世界地図を作るにあたってはオランダ語を解することができない朱子学者たちによって作製されたマテオ・リッチ系世界地図を参考にしたため、新知見の取り入れが少なく、ニューギニアとオーストラリアが一体となっていたり、カルフォルニア半島が独立した大島として描かれたりしていて、その後に次々と刊行されるようになる新知識をもとにした蘭学者たちの世界図と比べていささか見劣りが感じられるようです。

実際の地勢により近い世界地図刊行は、橋本伯敏の地図から2~30年あとの1800年代初頭からであることを考えると伯敏の地図は、マテオ・リッチ系の古い形態から蘭学系の新しい形態への過渡期に作られた地図と言えるのではないかと思います。



和本/17cm×23.5cm/19丁/題せん欠(当初からの有無は不明)
筆写の年代は書かれていません。筆者名は「小西義忠」とあるのみです。
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