星の事典/鈴木駿太郎 著 フラムスチード星図と星宿・天官図 1968年発行
著者・鈴木駿太郎氏は明治28年の神奈川県横須賀生まれ。
神奈川県立第四中学を卒業後、臨時教員養成所に入校、大正末年に文部省中等教員地理科検定合格、小学校・中学校教員在籍二十四年、その後出版業に従事。
教員試験に合格した頃より天文に興味を持ち、教員生活の傍ら星座名や星名の各地域・各言語での呼名やその意味・由来・エピソードなどを蒐集。
これらをまとめた原稿を戦前に東京天文台の神田茂に提出し校閲を得たが出版に至らず、終戦後に朝鮮からの引揚に際して原稿を現地に残したままとなった、とのこと。
戦後、主に社会事業に携わりながら星名蒐集を再開し、昭和40年の秋に脱稿。 完成原稿は東京天文台の関口直甫、神田茂、東京商船大学の渡辺敏夫の諸氏の校閲を経て昭和43年(1968)に恒星社厚生閣より刊行。
とあるように、本書全334ページのうち48ページを使って見開き2ページのフラムスチード星座絵25図が掲載されています。
フラムスチード星図は、イギリスのグリニッジ天文台の創設に尽力し、その初代台長となったジョン・フラムスチード(1646-1719)の恒星の位置観測に基づき、彼の没後1729年に当時のイギリス画壇の重鎮だったジェームズ・ソーンヒルの原図をもとにした星座絵を添えて出版された星図です。
初版はロンドンで出版されましたが、第2版は1776年にパリで出版されています。その後1781年に新版がロンドンで、第2版の改訂版とも言える第3版が1795年にパリで出版されました。本書の掲載星図は、昭和18年に恒星社厚生閣が発行した「フラムスチード天球図譜」と同じもので1776年の第2版です。
これらはいずれも「二十八宿」に含まれますが、本文解説ページでは二十八宿以外の星座「天官」も詳細に図示されています。
中国の星座については「中国の星座の歴史/大崎正次著/雄山閣出版/1987年」に非常に詳しい解説が載っていますが、現在ではかなり入手困難であり、ほかに類似書籍が少ないなか、「星の事典」は中国星座にご興味がある方にとって大変有益な図書に成り得ると思います。
また、中国星座だけではなく、江戸時代に渋川春海が制定した星座(61星座・308星)も記載されています。
上の図では ↑ オリオンの三ツ星の右下の「大宰府」、図の上端の「玄蕃(げんば)」が渋川春海の制定星座で、1699年(元禄12年)に春海の嗣子・昔尹(ひさただ)の名で刊行された星図「天文成象」に記載されたものです。春海の制定星座の同定は渡辺敏夫氏によるものです。
主要星についてはラテン語・アラビヤ語の名称と語源・意味、光度、スペクトル型、変光星、重星などが記され、星雲・星団も著名なものは図付きで解説されています。
フラムスチード番号は現在の星図でも使われていて、たとえばオリオン座α星(ベテルギウス)は、フラムスチード番号58番星、おとめ座のα星(スピカ)は、おとめ座67番星、という具合です。
巻末に付録として著者考案の「エンドレス星図」が折り込まれています。これは横長の星図を本体から切り取り、両端を糊付けして円筒形にして使うもので、各星座の位置関係がよくわかるユニークな星図です。もちろん、切り取らずにそのまま星図としても使用可能です。
星の事典
著者: 鈴木駿太郎
発行年: 昭和43年1月15日 第1版第1刷発行
発行所: 恒星社厚生閣
発行者: 志賀正路
本体サイズ: 26×19センチ/図版(星図)25図/写真(散光星雲・暗黒星雲・球状星団等)16ページ/本文 122~313ページ/索引 314~332ページ/あとがき 333~334ページ
定価: 2800円
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改訂版: 昭和49年(1974)発行/ページ数等は第1版と同じ/定価4000円(税込)
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改訂2版: 昭和54年(1979))発行/ページ数等は第1版と同じ/定価4500円(税込)
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新装版: 昭和63年(1988)発行/ページ数等は第1版と同じ/定価5800円(税込)
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なお、著者は俳句結社に所属した俳人でもあり、昭和38年に「句集 流星群」を上梓されています。
また、昭和24年創立の横須賀天文同好会にも所属していました。(日本アマチュア天文史改訂版/230ページ)