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五藤光学「M-1型」プラネタリウム

「Sky and TELESCOPE」の1959年12月号に五藤光学のM-1型プラネタリウムの広告が載っていましたので、初期のプラネタリウムに興味がある者としてちょっと紹介させて頂きます。 ↓

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東京国際見本市会場の五藤光学特設館 ↑

1959年5月16日、東京晴海で開催された東京国際見本市で、国産初のレンズ投映式中型プラネタリウム「M-1型」が公開されました。

「M-1型」は、中央に南北両球の恒星球がつき、その外側に惑星等を投影する惑星棚がついた「モリソン型」と呼ばれる形式のプラネタリウムで、6等星までの恒星 4,500個を投影することができます。

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五藤光学特設館の拡大 ↑ ↓ 15cm屈折などが見えています。
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開発着手は1955年で、以前よりプラネタリウムに関心を示していた五藤斎三氏はこの年に海外のプラネタリウム事情を視察、アメリカで出会った「モリソン型」を念頭に開発を進め、4年後の1959年に初公開に至った、ということです。

開発に当たって吉田尹道氏の協力を得た(地上に星空を/伊東昌市著)ということですが、筆者(ブログ主)は吉田尹道氏については全く不明です。

モリソン型プラネタリウムは、米国カリフォルニア科学アカデミーが自主開発したプラネタリウムで、呼称はカリフォルニア科学アカデミーの援助者のアレクサンダー・モリソンに因んでいます。 1号機は1952年11月に完成、カリフォルニア科学アカデミー博物館に設置されました。

「M-1型」は、東京国際見本市が開かれた1959年の12月に早くも1号機が浅草公園六区の新世界ビル ↓ に納入されています。

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Sky and TELESCOPE 1962年4月号より/「娯楽の大殿堂」の文字が見えます。

次いで静岡県の富士観日本平センターに設置 ↓ (プラネタリウム機材の納入は1959年)

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Sky and TELESCOPE 1962年5月号より

右側が「M-1型」を収めた10mドーム・130人~150人収容、左は五藤20cm屈折の1号機が入った6mドーム。 プラネタリウム・ドームの下に「銘茶」の看板を掲げた茶店?、あるいは売店?が見えています。


「M-1型」は、完成の翌年(1960年)にニューヨークで開催された第4回全米国際見本市にも出品されています。「M-1型」はその優秀性に加えて、当時の販売価格が800万円と非常に廉価であったため、全米より注目されて多くの問い合わせを受けた、と言われています。


海外最初の購入はアメリカ・コネチカット州のブリッジポート博物館で、1962年にドーム径10.1mのヘンリー・デュポンⅢ世プラネタリウムとして開館されています。これ以後、「M-1型」は世界各地に輸出されるようになります。


富士観日本平センターに設置された以後の日本での納入先は下記のとおりです。(年代順)


● 海上自衛隊幹部候補生学校(広島県呉) ↓ 昭和37年(1962)3月開館/1988年以降運用停止

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Sky and TELESCOPE 11963年11月号より ↑

● 神奈川県立青少年センター  ↓ 昭和37年(1962)10月1日開館/昭和47年(1972)までM-1型使用、以後機種変更

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Sky and TELESCOPE 1963年8月号より ↑ 右側の望遠鏡ドームは、五藤20cm屈折を収納した6mドームで広瀬秀雄氏の設計によるもの

● 室蘭市青少年科学館 昭和38年(1963)4月開館/昭和46年(1971)6月現在稼働中/1976年3月に機種変更

● 釧路市青少年科学館 昭和38年(1963)6月15日開館/昭和52年(1977)4月現在稼働中(同年に機種変更)/2005年閉館

● 山梨県立青少年科学センター 昭和39年(1964)4月開館/昭和52年(1977)4月現在稼働中/1998年8月現在稼働中/2019年現在閉館(閉館年不明)

● 帯広市児童館 昭和39年(1964)9月27日開館/昭和52年(1977)4月現在稼働中/1998年8月現在M稼働中/2000年6月に機種変更

● 栃木県児童会館(現栃木県子ども総合科学館) 昭和40年(1965)開館/1975年に機種変更

● 東京水産大学(現東京海洋大学) 昭和40年(1965)3月設置・4月開館 /2015年10月現在稼働中/2019年現在稼働中/M-1型-114号機

● 那覇市久茂地公民館(旧沖縄少年会館) 昭和41年(1966)4月7日開館/昭和52年(1977)4月現在M-1型稼働中/2000年1月現在M-1-S型544号機稼働中/2011年閉館/2015年7月現在・牧志駅前ほしぞら公民館に現存

● 千葉明徳高等学校 昭和41年(1966)4月開館/詳細不明

● 鹿児島県文化センター(鹿児島県立博物館プラネタリウム) 昭和41年(1966)11月15日開館/昭和52年(1977)4月現在稼働中/1980年に機種変更

● 東京都立教育研究所(現東京都教職員研修センター) 昭和42年(1967)4月開館/M-1型稼働期間不明

● 千葉市郷土館 昭和42年(1967)4月9日開館/昭和52年(1977)4月現在稼働中/1991年に機種変更

● 新宿区立教育センター 昭和42年(1967)8月開館/昭和52年(1977)現在稼働中/1982年9月に機種変更

● 満光園プラネタリウム館(山形県鶴岡市/株式会社庄内観光公社) 昭和44年(1969)5月開館/昭和46年(1971)6月現在稼働中/1998年現在閉館(閉館年不明)

● 新潟県中越青少年文化センター(現長岡市青少年文化センター) 昭和44年(1969)6月22日開館/昭和52年(1977)4月現在稼働中/1998年現在機種変更済み(変更年不明)

● 青梅市教育センタープラネタリウム 昭和46年(1971)10月開館/同年11月1日運用開始/2011年3月閉館/M-1型-128号機


以上、国内19施設


稼働状況については、「日本の天文台/天文ガイド別冊/1971年」「日本のプラネタリウム一覧/全国プラネタリウム連絡協議会発行/1977年」「地上に星空を-プラネタリウムの歴史と技術/伊東昌市著/裳華房発行/1998年」「全国プラネタリウムガイド/日本プラネタリウム協議会監修/恒星社厚生閣発行/2015年」を参考にさせて頂きました。


上記の通り2019年現在で稼働中は、東京海洋大学のみのようです。但し、毎年6月上旬に行われる同大学の「海王祭」でのみ一般公開とのことです。


上記リストの東京水産大学のM-1型-114号機や青梅市教育センタープラネタリウムのM-1型-128号機の数字(シリアルナンバー)は、そのまま製造数とはならないようですね? (114号機は1型14号機の意味?)

海外からも引き合いが多かった機種とは言え128台も作ったとは思えないのですが??? 実際のところ製造数はどのくらいだったのでしょうか。

また、製造完了の順番と納入の順番は必ずしも一致していないのではないでしょうか。 五藤光学の公式HP(英文公式も含む)では、ブリッジポート博物館納入は2号機となっていますし、国内文献では静岡県の富士観日本平センター納入機が2号機となっています。 施設の開設とプラネタリウム館の開館が同時とは限りませんし、実際のプラネタリウム機材納入の時期と実働開始の時期にもズレがあるようですし・・・。


M-1型は10mドーム用ですが、15m用のM-2型も開発されています。また、5~8m用のSシリーズもあり、多くの自治体・公共施設・学校へ納入されています。

のちにM-1型はGX型に、M-2型はGM型に改良されて行くことになります。


by iruka-boshi | 2019-03-16 05:53 | プラネタリウム/天文台 | Comments(0)