水田と祠/行橋市大谷地区
少しばかり水面を残した田んぼはそれだけで清々しさを誘い、梅雨のさなかであることを忘れさせてくれます。
本日、梅雨の末期を思わせる激しい雨の合間を縫って出かけた折、少し遠回りをしてここ大谷地区(行橋市)に来てみました。
どこまでも続く稲葉のうえを渡り来る風は湿り気を帯びているものの、やがて訪れるであろう夏の日の爽やかな風を想起してやみません。
広い水田の一隅にひと塊の木々が見えます。近づいてみると小さな祠が祀られていました。
たまたまお詣りに来られた近所に住まわれるというご老人にお伺いすると、正月と7月11日の年二回、この祠をお守りしている近所7軒共同で「おこもり」をしているとのこと。
代々7軒で古くからお守りをしてきたそうで今年85歳になるとおっしゃるK翁は「祠は行橋市元永の今井津祇園社から勧請したそうだ」が詳しいことはわからず、覚えていることと言えば翁が5歳くらいのときに以前からあった少し大きめの祠を現在の祠に作り替えた、とのこと。
昔は「おこもり」の時、行橋から座頭さんを招いて琵琶を弾いて語り物を語ってもらっていたそうですが、今は近くの大分八幡宮の宮司のお祓いを受けて「おこもり」をしているそうです。
翁の話しに耳を傾けながら小さな祠を取り囲む木々に目をやると、青々とした水田を渡ってくる風に時おり枝を震わせていました。少し離れた場所でお話しを伺っていましたが、サワサワと葉擦れの音も聞こえてくるようでした。