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Note Observation - 22 Feb.6.1954

詳細不明の・・・、天文同好会の会誌と言ってよいのやら...。
よくわかりませんが、日付の前の「Note Observation」が誌名で、その第22号ということでしょうか。

執筆者は東山天文台(名古屋市)の「H.Yamada」氏です。二つ折りの4ページ会誌?(あるいは講習会などのテキスト?)で、画像はその表紙です。

描かれているのはオリオン星雲で、「V.G.Fessenkovに依って描かれたオリオン星雲の姿」の添え書きがあります。「山田 写」とも書かれています。
Note Observation - 22 Feb.6.1954_d0163575_15202638.jpg

2ページ目は、「不定形ガス状星雲の一般論」と題し、オリオン大星雲などの不定形ガス状星雲が光る原因とされた従来の説(星雲中に含まれるネブリウム(Nebulium)と仮に名付けられた未知の元素の作用とする説/1864年~)を退け、自らの観測によりプレアデス星団を包むガス状星雲の光る原因を究明したスライファーの功績(星団の中の恒星が発する光を反射して光っているとする説/1912年)を紹介しています。

3ページ目は、ハッブルが1922年に発見した「星雲の明るさと、星雲を光らせている恒星の間には逆2乗の法則が成り立つ」ことを「エネルギー源恒星の光度と星雲の拡がりとの関係」のタイトルで解説しています。

4ページ目(最終ページ)は、オリオン大星雲についての解説と表紙に描かれたオリオン大星雲の図についての説明です。一部を転記します。

「最近ソビエット連邦のV.G.Fessenkovはオリオン星雲の見とり図を発表した(1ページ参照)。彼の作品は恐らく多くの議論をまきおこし、又非難を受けるかも知れない。見取り図は過去の如何なるそれとも似ていない。

・・・彼はこの図の中に、星々をつなぐ繊糸状の「星鎖」をいくつも描いている。彼はオリオン星雲内に行われつゝある原始恒星の誕生を暗示するのである。・・・比較的無意識に美しさを味はっていたオリオン星雲も、今この新しいロシヤの科学者に依る発表と同時に、一度注意の眼を向けたいと思う。」


Note Observation - 22 Feb.6.1954
Higasiyama Astronomical Observation by H.Yamada
「ORION NEBULA」
25.5×35.5cm用紙を二つ折り/4ページ

ところで、謎の元素ネブリウムはその後どうなったのか。

ウェストン・スライファーによって星雲が発光する理由が解明されても、依然として星雲スペクトル中に現れる輝線の由来(ウィリアム・ニコルソンによって元素ネブリウムの存在が指摘された)は謎のままでした。

・・・が、やがて、ヘンリー・ノリス・ラッセルが発表した「恒星から輻射される強烈な紫外線または電子の流れは、たとえ低温で低密度のガスであっても当たれば輝線を放ち得る」という説を手がかりに、1927年に至ってアメリカの天文学者アイラ・ボーエンにより、正体不明のスペクトル線はイオン化した酸素であることを突き止められ、ネブリウム問題は解決されたのでした、とのことです。
by iruka-boshi | 2011-06-18 15:21 | 星の本・資料 | Comments(0)