植物の星座
現行88星座のうち、その大半を人物と動物の星座が占め、残りは顕微鏡や祭壇や羅針盤などの器具と山と川の星座があるばかりで、花や木々の星座が無いということ。
ギリシャ・ローマ神話で活躍する英雄や女神や妖精たちと彼らにかかわる動物たちの星座が多いのは当然のことながら、神話にはいろいろな植物も登場する。・・・にもよらず、植物が星座に取り上げられていないのは、やはり神話では脇役でしかなかったためか・・・。
15・16世紀以降、航海術の発達により南半球への進出で、今まであまり眼にすることがなかった南天にもさまざまな星座がつくられ、カメレオンやふうちょう(風鳥)やクジャク(孔雀)やきょしちょう(巨嘴鳥)、あるいは、かじき、とびうおなどの魚が星座となった。南洋の珍奇なものであるなら、ヤシの木や熱帯の果物などでもよかったのではないか・・・。(かじきは、「金魚」という説もある)
もっとも、星座絵にはそれこそ脇役ながら、植物が少しばかり描かれている。
おとめ座の麦の穂もそうですが、ほかに「はと座」の鳩がくわえたオリーブの小枝ときょしちょう座
の巨嘴鳥(キツツキ目オオハシ科)がくわえた何だかわからない小枝、それにヘラクレス座のヘラクレスが右手に持った蛇が巻き付いている白楊の枝。
ヘヴェリウス星図の「きょしちょう座」
この白楊の枝は、ヘラクレスが地獄の番犬ケルベロスを地上に連れ出すとき、地獄から持ち帰ったものだそうで、オリンピアのゼウスへの犠牲のさいに用いられるもの、とのこと。
このように植物が描かれているもののそれ自体は、独立した星座ではない。しかし、過去においては独立したひとつの星座として植物の星座があったそうです。
それは、「チャールズの樫の木」と「百合の花」の星座のふたつ。このうち「ゆりのはな座」は、フランスのブルボン王朝の紋章で図案化されたものですので、植物の星座と言えるかどうか。1679年にフランスの天文学者ロワーエがつくった星座で、王朝の没落とともに無くなったようです。
もうひとつの「チャールズの樫の木座」は、ハレー彗星でよく知られたイギリスの天文学者エドマンド・ハレーがつくったもので、英国王チャールズ二世に捧げられています。
(つづきます)