北極閣天文台(南京名所)絵葉書

絵葉書の説明書きでは「天文台」となってますが、厳密に言えば「気象台」です。しかし気象と天象が未分化の場合もありますので、まあこれで良いかもですね。
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この北極閣の観測所については昭和14年9月発行の「中華民国ニ於ケル既往気象事業ノ概況」(興亜院華北連絡部・発行)の3ページ目に

「明太祖鶏鳴山(今ノ南京北極閣)上ニ観象台ヲ建テ此処ニ有圭表、向風計ヲ安置ス 之向風計、風信器ナルヘシ、清康熈帝自カラ一小旗ヲ以テ風向ヲ測リ又直隷各省ニ命シ雨、風、雷等ノ観測ヲ行フ」とあります。

絵葉書の通信面を見ると「南京市アジヤホテル 父ヨリ」出され、福岡県嘉穂郡に住む我が子へ送られたものであることが分かります。

消印の日付は不鮮明ですが、どうやら差し出し年は「廿八年」のようです。民国28年は1939年で昭和14年にあたります。
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蒋介石が対日決戦声明を発したのは昭和12年7月(1937年)で日本軍による南京陥落はこの年の12月13日でしたので、この絵葉書は南京占領後の翌々年に出されたものということになります。差出人のお父さんは上海、杭州、蘇州を巡って南京に着いたようで、その間の列車内の様子が書かれています。
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「・・・汽車ノ中ニモ 四五人ヅツノ兵タイサンガ剣ヲツケタ鉄砲ヲ持ッテ乗ッテ下サイマス 線路ハ所々ニ 二三十人ヅツ位ノ兵タイサンガ守ッテ居レマスノデ私達ハ安心シテ旅行ガサレマス」お父さんは民間人のようですね。

葉書の最後は「強イヨイ日本ノ子供ニナッテ下サイ」と書かれていますが、このフレーズはこの時期の手紙類の終わりによく出てくる文言です。

表現は少しづつ違いますが、文意は同じですので子供に送る手紙の挨拶がわりの常套句だったのでしょう。もちろん、言葉どおりそのように願っていたことと思います。

お知らせ/いるか書房本館に「北極閣天文台 絵葉書」をUPしました。→ ここ ←未使用品・状態良です。
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by iruka-boshi | 2010-10-04 12:26 | 天文台 | Comments(6)
Commented by なつひこ at 2010-10-04 18:46 x
気の回し過ぎかもしれませんが、第三者に読まれても
差支えない様な雰囲気ですが、警備が厳しいぞ!という
通信にも思えます。

気象台と天文という訳ではありませんが、戦前は
気象台に10センチクラスの屈折望遠鏡から
大きいのでは20センチ超えるのもあった様ですので、
まんざら無関係でも無さそうです。

ただ 本年度で 測候所が事実上無くなったのは
デ-タ蓄積もそうですが、残念な気がします。

Commented by iruka-boshi at 2010-10-05 22:26
頂いたコメントとは直接関係なくて恐縮ですが、戦前の手紙・葉書を見るとあまりの達筆と崩し字の加減に絶句してしまいます。旧字ということもありますが、特に筆を用いた宛名書きは「よくこれで相手に届いたなあ」と感心させられます。
Commented by 大乃井音楽図像学研究所 at 2010-10-05 23:46 x
中華民国の切手、はじめて拝見しました。この図像の2本の柱と
太陽はメーソンの象徴だと思われます。左右の「柱」はそれぞれヤキンとボアズ、基礎と力をあらわし、細部まで書き込まれた柱頭のイオニア様式は「知」を、また「太陽」は知の光明(エンライトメント)の象徴ではないでしょうか。列強国の三つ巴の時代は様々に絡み合っているようです。
Commented by iruka-boshi at 2010-10-06 20:37
2本の柱、単なる権威付けのためのデザインとしか認識してませんでしたが、そういうことなんですね。昔も今も戦時下やある種の緊張状態の国・地域では、紙幣や切手は格好のメッセージ媒体で、日本もそうでした。戦前の切手のデザインを詳細に見てゆけば様々なメッセージが読み取れそうです。現代も知らず知らずに何らかのメッセージを受け取らされているとしたら・・・。考えすぎですか?
Commented by Nao_a_jp at 2011-12-09 22:34 x
http://www.history.gr.jp/~nanking/fukei_hokyoku.html
北 極 閣
昭和13年(1938)年、春~夏撮影
昭和13年、軍事郵便の絵葉書に使われた写真
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こちらを拝見する直前に、上記のページを見ていたので、
軍事郵政の絵葉書そのものを拝見出来て嬉しいです。
南京に関していろいろ言われていますが、
当時を知る方から「南京事件は、中国の革命が在って、その中で中国軍がやった事を日本のせいにされている」と伺っていたので、ずっと気になっていました。
御紹介の葉書と切手へのコメントを書いて下さった方の御説明が、とてもヒントになりました。
先人からのメッセージ、御自身の御家族宛てとはいえ、
様々な意味で、とても嬉しいものですね。
御紹介ありがとうございます。
ホームページに葉書や切手の御紹介文や画像など、転載させて戴いてもよろしいでしょうか?
Commented by iruka-boshi at 2011-12-10 06:01
コメントを有難うございました。当時の個人的な手紙類や日記などは、歴史書とはまた違った角度でメッセージを現代に伝えてくれるようで貴重なものと思います。
画像の転載と紹介文は構いません。他の方のコメントについては私が許可する立場ではありませんが、ご参考にされるのは良いのではないでしょうか。