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大空の神秘(2)

昨日、内容について大きな項目をあげましたが、本日はもう少し細かく挙げると天文関係では、太陽系のはなし・太陽について・月について・地球について、の4項目。気象関係では、気象現象の話しと合わせて「虹の正体」などの光の物理的性質の説明と貿易風や台風の説明。それと「自然界の水」の雲・霧・露・霜などのお話しです。

特に台風の項目では、実際に日本に襲来した台風の新聞掲載時の天気図や昭和23年のリビー台風のときの新聞記事をそのまま掲載して妙にリアリティを持たせています。この本は「科学童話」と銘打っているように太郎君と兄さんの國雄君の疑問にお父さんが答えるというかたちを取って物語りを進めています。しかし二人ともお話しを聞くだけでなく、自分で観察したり実験したりとなかなか感心です。

それだけに読み進むうちに、作者の言いたいことをムリヤリ二人にしゃべらしているように感じて来る頃に実際の新聞記事を持ってきてリアリティを持たせて読者を飽きさせない。巧妙ですねえ。

もうひとつ巧妙というかシッカリしているというか、ちょっと本文より抜粋します。

太郎君と國雄君がもっと天文の研究をしたいので何かよい本がないかとお父さんに尋ねます。するとお父さんが

「そうだ、國雄君は、日本出版社で発行している、東亜天文学会の「天界」という雑誌をよむがよかろう。その基礎として、同社で発行している国民科学文庫の中に村上忠敬先生の「星座ものがたり」「太陽」などがある。これらはよい本です。」

「太郎のよみものは、文理書房で発行する高城先生の「天文の話」と日本出版社の阿部先生の「空気のはたらき」がひじょうによいとおもう。」・・・・と、非常に具体的にお父さんにしゃべらせて、ちゃっかり宣伝を入れてます。

高城先生とは、日本初のプラネタリウム・大阪市立電気科学館の天文部主任を務めた高城武夫さん(1909-1982)のことだろうし、村上忠敬先生も高名な方だから説明は割合するとして、「日本出版社の阿部先生」とは誰なのか。

お父さんは「日本出版社で発行している、東亜天文学会の「天界」」と言ってます。

たしかにお父さんの言うようにこの時期(昭和23年24年頃)、「天界」の発行元は日本出版社でした。そこで、「天界」と「阿部先生」のつながりをさがしたのですが、結局よくわからず、辛うじて見えてきたことは「阿部先生」とは、ニュートンの「光学」(岩波文庫・昭和15年)などを翻訳した寺田寅彦門下の阿部良夫さん(父の事業を継ぎ、
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北海タイムス、のちの北海道新聞社の社長に就任)のことではないだろうか、ということでした。

科学童話 大空の神秘
著者:沖吉昌登/脇坂景城
発行:文理書房 脇坂道雄(大阪市阿倍野区文の里)
発売:日本出版社 (大阪市阿倍野区北田辺町三〇六)
印刷:ナルト印刷株式会社(大阪市東住吉区西田辺町)
印刷日:昭和24年1月10日
発行日:昭和24年1月15日 初版
12.5cm×18.5cm/218ページ
by iruka-boshi | 2010-06-20 00:11 | いろんな本 | Comments(0)