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「時事世界」は戦後次々に創刊されたグラフ誌のなかでも比較的早い段階での創刊で、昭和22年4月に第1巻1号が出ています。

同時期のグラフ誌には戦前から続く「アサヒグラフ」(大正12年1月25日創刊)は別格として昭和22年11月12日創刊の「週刊サンニュース」、昭和23年7月1日創刊の「毎日グラフ」、昭和24年創刊「国際文化画報」、少し遅れて「世界文化画報」(昭和27年創刊)などがありました。

これらのうち「アサヒグラフ」は平成12年の10月15日増刊号『シドニー・オリンピック総集編』を持って休刊となり、「毎日グラフ」は平成6年に『AMUSE』に改題されたのち平成13年に休刊となっていて割合長い間発刊され続けましたが、他のグラフ誌は比較的短命に終わっています。

特に「時事世界」と同じ年に創刊された「週刊サンニュース」は、質の高い写真と個性的な編集で多くの耳目を集めながらも、創刊翌々年の昭和24年3月5日付けの通巻41号で終刊となっていますので、昭和34年の14巻9号で廃刊となった「時事世界」は移り変わりの早い出版界のなかにあって、12年間よく健闘した雑誌ではないかと思います。
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「時事世界」第4巻第6号の表紙 ↑ 「平和使節として訪米が決定した"ミス・ニッポン"」左より準ミス・ニッポン田村淑子さん(20才)、ミス・ニッポン山本富士子さん(18才)、準ミス・ニッポン三村惠子さん(19才)、この年の4月22日に東京目黒の雅叙園で開催された第一回ミス日本の審査会で選ばれた三嬢。翌年、米国からの支援物資の答礼使節として公式訪米しています。

「時事世界」の内容構成は大きく三つに分けられるようで、国内外の政治的・軍事的情勢、同じく内外の芸能・ファッション・スポーツなどの娯楽的要素を含んだもの、そして雑多な事象を取り上げたもの、になると思います。

本日の第4巻第6号の発行は昭和25年で、戦争終結はわずか5年前のこと、「時事世界」を手にした当時の読者は、政治的・軍事的情勢の報道で戦時の記憶を呼び覚まし、同時に国内いたるところに残る戦禍を再確認させ、娯楽的記事では新しい日本の始まりを予感し、事件・事故関連では徐々に落ち着きを取り戻しているものの今もなお混乱した社会であることを再認識させられたのではないでしょうか。
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近代化されたトルコ国防軍 ↑
「トルコは今や共産主義勢力の浸透を防ぐため、アメリカの軍事援助に依て、着々と軍備が進められている」と説明されています。写真は、「アメリカ軍事使節団から米式訓練を受けたトルコの陸軍兵士」。左の写真は「米軍使節団のレウイス・ハマック大佐(中央人物)とトルコ戦車隊隊員」
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中共軍海南島に上陸す ↑ 中国大陸のほとんどを掌中に収めた中共軍は、残る国府軍の拠点海南島と台湾への攻撃を開始、林彪将軍率いる2個師団が4月16日午後5時より海南島上陸作戦を展開し、激戦の末、4月23日に海南島の主要地ハイコウ(海口)を占拠した。 写真は国府軍に捕らえられ、収容所で食事をする中共軍兵士たち。

できることなら中共軍側が撮影した上陸作戦中の写真を見たかったのですが入手は到底無理なこと、画像ではカットしましたがこの記事に添えられた写真はすべて国府軍側の視点で捉えたものばかりです。左のページの女性は、台中近郊の国民政府軍訓練所を慰問する宋美齢夫人。

軍事関係ではこのほかにシベリアに抑留されていた将兵1600名が帰国したことや「米国軍隊の近代的武装」がありますが、圧巻は裏表紙一面に記載された昭和25年4月1から30日までの世界各国の軍事的動向です。日にちごとに書かれていて、例えばソ連抑留の日本兵送還のことやインドシナ駐留フランス軍とホー・チミン軍との戦闘のこと、バルチック海上空でソ連戦闘機が米国海軍機を撃墜したこと、インドネシア連邦政府軍とマカッサル反乱軍の動向等々で各地で新たな紛争が起きていることがわかります。

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「米国軍隊の近代的武装」 ↑ 右上とその左、アメリカ空軍落下傘兵の軍装、左上は高々度を飛行するパイロット用の与圧服、下はアメリカ陸軍山岳兵のスパイク靴と防寒服

ハリウッドスターを含む芸能関係記事も多数目に付きます。 ↓ 写真左上、映画「彼女自身の生活」の撮影のためにヘレン・タービンに髪を結ってもらうラナ・ターナー、下はコンラッド・ヒルトン・ジュニアとの挙式を控えてマンハッタンの衣裳店で着附をするエリザベス・テイラー。

右上は交通安全功労賞を贈られるロバート・ヤング、右の女性は、交通安全女王のカイル・マクドネル嬢。
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国内の芸能関係もたくさん載っていて、 ↑ 時代劇映画の俳優坂東好太郎がその名を本間謙太郎と改めて、現代劇映画に出演する話や毎日新聞連載のマンガ「デン助(横山隆一作)」が映画化されることになり、その主演の堺駿二(デン助役)と笠置シヅ子(ペ子ちゃん役)の撮影風景、等々の記事に混ざって公演のために渡米する小唄勝太郎、相三味線の佐藤けい子、歌手渡邊はま子の三名が「張りきる芸能人」のタイトルで取り上げられています。 写真左から渡邊さん、佐藤さん、勝太郎さんです。

ファッション関連も多数掲載されていますが、いずれもハリウッドやニューヨーク、シカゴの最新モードの紹介で、日本国内の流行を追っているものではありません。

モデルの女性は多分アメリカ人でしょうが、これはファッションの紹介というよりも「美しい女性がモデル」の写真の紹介ではないかと思ってしまう取り上げ方です。

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ボートレースや水上スキー、レスリングなどのスポーツ記事も載っていますが、ここでは女子野球の写真を転載します。 ↑ 日本女子野球連盟結成後、最初の4球団トーナメント戦が昭和25年4月10日に後楽園球場で開催されています。写真はこの時のもので右より「ブルーバード」「ホーマー」「パールス」「レッド・ソックス」の各チーム入場式風景です。

ただし、「レッド・ソックス」はこの写真には写っていません。入場式の下は「ブルーバードの攻撃に、大島が内野匍で一塁に進み、塁手川上の落球で一塁セーフ」とのこと。

ほかには熱海温泉の大火や貿易公団の公金一億円横領事件など興味深い、というか好奇心が刺激される雑多な記事満載の「時事世界」ですが、最後に生駒山天文台の反射望遠鏡の写真と記事を載せて終わりにします。

なお、望遠鏡の左の写真は、国土緑化推進委員会と山梨県共催の記念植樹式に臨席された天皇皇后両陛下です。
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「生駒山遊園地の山の上に、埃にまみれて眠っている東洋一の大きな反射望遠鏡がある。これは去る昭和14年、京大花山天文台長山本一清博士がイギリスから購入し、其の後、近鉄の所有に帰したもので、口径61センチ、焦点距離3メートル83センチ、時価数百万円と称せられ、徒らに錆つかせておいてはまことに惜しいものだとの評判である。」


時事世界 第四巻第六号 六月号(通巻第三十五号)
昭和二十五年五月二十五日印刷
昭和二十五年六月一日発行
編集兼発行人 多田鐵雄
印刷所 大熊整美堂
発行所 時事世界社
21×30cm/31ページ+口絵1枚(歌川豊国筆「水無月」オフセット多色刷り)/表紙:選ばれたミス・ニッポン(プロセス版)
定価一部 五十五円 配達送料共六拾円也
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1977年度の初等教育3年生用の算数教科書です。
文章問題、計算問題、図形問題など全部で1091個の設問が掲載されています。

しかし、問題の解き方を記述している箇所はあまりなく、最初のページから最終ページまでほとんど設問で構成されています。

その為、一見、問題集のような印象を受けますが、1091個の設問とは別に練習問題のページがわざわざ設けられていますので、やはり問題集ではなく教科書であることがわかります。
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解き方、あるいは基本的な考え方は先生が行う板書説明によることを前提として編集されている教科書なのだろう、と推測します。

文字だけのそっけない問題 ↓ もありますが、
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96.「ホールに8列の椅子があり、各々の列には12脚の椅子があります。ホールへ各クラス42人の生徒が2クラス到着しました。すべての生徒のために椅子は十分でしょうか。もし、余っていればいくつでしょうか。」

イラスト付きの文章問題もけっこうあって ↓ 想像でなんとなく質問内容がわかるような気がします。(気がするだけです)
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【На Луне все лредметы в 6 раз легче、 чем на Земле Сколько весил на Луне 「ЛУноход-1」который весил на Земле 756kg? 「ЛУноход-2」который весил на Земле 840kg? Человек、 который весит наЗемле 72kg?】 ↓
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↑ 「月の重力は地球の6分の1ですが、地上で756kgの「ルノホート1号」の重さは月ではいくらになりますか? 地上で840kgの「ルノホート2号」の重さはいくらになりますか?
体重72kgの人間はいくらになりますか?」

「Луне」(月)や「Земле」(地球・地上)、Сколько(どれだけ)、весил(量る)などの単語をたよりに超訳しましたが、だいたいこんな問いだと思います。

ルノホート1号は史上初めて他の天体(月)に到達した移動可能探査機で、1970年11月にルナ17号によって月面へ運ばれています。ルノホート2号の月面到着は1973年です。

【Первым космонавтом был гражданин Советского Союза、 коммунист Юрий Гагарин. Он совершил полёт вокруг Земли за 108мин.
Сколько часов и Сколько минут продопжался первый полёт вокруг Земли?】
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↑ 「ソ連の最初の宇宙飛行士はユーリイ・ガガーリンで、地球を108分で一周しました。これは何時間何分で周り続けたのでしょうか?」

超訳ですが、だいたいこんなことでしょう。

Первым(最初)/космонавтом(宇宙飛行士)/Юрий Гагарин(ユーリイ・ガガーリン)/полёт(フライト)/вокруг(周りに)/продопжался(続けた)、「мин」は「分」です。この教科書の裏表紙に長さや重さの単位とともに時間の単位の換算が記されています。
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 ↑ 左から「ДЛИНЫ 長さ」「МАССЫ 重さ」「ВРЕМЕНИ 時間」で、その下は「面積」です。
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割り算の問題、↑ 問425の 87:3 130:2 906:3 などは 87÷3 130÷2 906÷3 のことで、記号は日本では「比」を表す : を使っています。

問426は割り算の筆算です。答を書く位置が違うので少しとまどいますが、これは慣れの問題ですね。

掛け算は×ではなく、・ で表しています。 ↓ 数字の書き方は升目に対して斜めに書く欧米式です。
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加減乗除が混在した問題、現在の日本の小学3年生の算数教科書を見たことありませんので、この問題がどの程度のレベルか分かりませんが、少なくとも私(筆者)のときより難しそうです。
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不等号を使った問題も出てきます。 ↑ 出てくる数字も大きくて何だか難しそう。 ↓
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イラスト付きの問題はそれだけでホッとします。農場で働くトラクターや道路工事のブルドーザーなどの「働いている姿」のイラストが多いようです。
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そして、バス、トラック、電車、船、ロケット、飛行機などの男の子が喜びそうな、というか工業力をアピールするようなものばかりで、お人形さんなんかは出てきませんね。
扉絵には女の子がいるんですが・・・・。
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最後に「ソヴィエト社会主義共和国連邦の紋章」を用いた問題を載せます。
設問の冒頭に『1972年にソビエト社会主義共和国連邦の成立50周年を祝いました』と書かれています。
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