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平成28年 元旦/J.G.WOOD著、THE ILLUSTRATED NATURAL HISTORY (MAMMALIA)

明けましておめでとうございます。
 本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
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J.G.WOOD著/THE ILLUSTRATED NATURAL HISTORY (MAMMALIA)、1880年刊行より ↑

今年は申年なので「猿」を取り上げたという単純な発想で平成28年最初のブログをお届け致します。
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著者のジョン・ジョージ・ウッドは、外科医の父ジョン・フリーマン・ウッドの長男として1827年にロンドンに生まれています。

1838年にダービーシャーのアシュボーン文法学校に入学、その後1845年マートンカレッジに入学し解剖学博物館でヘンリー・アクランド卿に師事、1848年に卒業後、1851年にジョージ・ウッド最初の著書「ILLUSTRATED NATURAL HISTORY(自然史)」を出版しています。 ↓ 画像はGeorge Routledge & Sons社/1880年版です。
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「イラスト自然史」の後、彼は1855年に「Sketches and Anecdotes of Animal Life(動物生態の逸話)」を刊行、1857年に「Common Objects of the Sea Shore(海岸の一般的な目的物(海岸生物))」、1860年に「Bees:their Habits, and Management(ミツバチの習慣と管理)」と「Animal Traits and Characteristics (動物の形質と特徴)」などを立て続けに発刊。

1889年にイングランドのウェスト・ミッドランズ州にあるコベントリーで死去するまでに前記の動物学・博物学の本に加えて体操、水泳、スケート、アーチェリー、フェンシングなどのスポーツの本や旧約聖書・新約聖書の歴史に関する本など数多くの著作を上梓しています。

また、彼は聖職者でもありオックスフォード教区の司祭を務めたほか、他の教区の運営にもさまざまな形で影響を与えた人物でもありました。

「THE ILLUSTRATED NATURAL HISTORY (MAMMALIA)」のイラストは、兄ジョージ・デュエル(1815-1902)と弟エドワード・デュエル(1817-1905)のデュエル兄弟が1839年に設立した木版画工房「デュエル兄弟社」によるものです。デュエル兄弟社は、ヴィクトリア朝の木版彫刻界を牽引した重要な工房でした。

ところで、2012年の元旦の拙ブログではこの年は「辰年」ということで、ヘベリウス星図の「りゅう座」を取り上げ、2014年の「午年」ではグロティウスの星座図帳から「ペガスス座」を載せ、2015年はヘベリウス星図の「牡羊座」でした。

そこで、今年の申年は猿の星座を取り上げたかったのですが「サル座」は無いんですね。いや、無いことはないのですが、 ↓ この星座の姿は「猨田彦神」であって『猿』ではないので、神と猿を同列に取り上げてよいものか、どうか。
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星座で読み解く日本神話/勝俣隆著/大修館書店/2000年刊 より ↑

・・・というようなことはちょっと措いといて、なぜ牡牛座のヒアデス星団が「猨田彦神」の姿(顔)を表す星座になるのか、を「星座で読み解く日本神話」をもとにごく簡単に述べてみます。(詳しくは同書をご覧いただければ幸いです)

まず、著者は古代日本人の宇宙観を示すものとして、「播磨国風土記」の託賀郡(たかのこおり)の記述、「延喜式祝詞の祈年祭」の記事、「古事記の序文」、「万葉集」の柿本人麿や丹生王の歌、「丹後国風土記」の浦島子の条、さらには古代中国の「列子 湯門篇」、晋の張華の「博物誌」などの記述を挙げ、「地上世界と天上世界のあいだには一定の厚さと硬さを持ったドーム状の壁がある」と考えられており、星はその壁にあいた穴から天上界の光りが漏れ見えているもの、と考えられていたとしています。

(ドーム状の壁は一定の厚さと硬さを持っているので空いた穴は「筒状」になっている。そこで、古代の星の呼称「ツツ」は筒状の穴に由来するものではないか、とも記しています)

そして天上界と地上界の往来はその「ツツ→星」を通して行われる、としています。次に著者は記紀神話の天孫降臨の場に注目します。天上界の最高神アマテラスオオミカミの孫ホノニニギノミコトが日向の高千穂峯に天降るとき、通り道である「天の八衢(あめのやちまた)」に立ちはだかる男神がいた、という場面です。

男神は光を放って上は天上界の高天原を照らし、下は葦原中国を照らしている。そこで御伴の神々のひとりであるアメノウズメノミコトが男神に名を尋ねます。

男神は答えて曰く「私は国つ神で、名はサルタビコノカミです。ここに出てきた理由は、天つ神の御子が天降ると聞きましたので、道案内をするためにやってきました」

サルタビコノカミの居る「天の八衢」の「八」は実数の八を表すと同時に「たくさん、多く、多数」も表します。「衢(ちまた)」は分かれ道のことです。

したがって「天の八衢」は「天にある多くの分かれ道」の意になります。道がたくさんあるので案内にやってきたということです。それでは「天の八衢」はどこにあるのか、ということになります。

星が天と地の通り道である以上、実際の星空でたくさんの星が一カ所に集まっている場所を捜すと「昴、プレアデス星団」がいちばん顕著な集まりとして浮上してきます。

しかも「すばる」は、古代より農業・漁業・航海の指標であり、丹後国風土記の浦島伝説を始めとして多くの物語・詩歌・里謡に登場し、日本各地に「すばる」に関する俚諺が伝わっていることでもわかるように良く知られた存在です。

さらに「すばる」は二十八宿のひとつであり、太陽の通り道である「黄道」に位置していますので、太陽神アマテラスオオミカミの孫であるニニギノミコトの通り道に最も相応しい、として「星座で読み解く日本神話」の著者は「すばる」を「天の八衢」に決定付けています。

次に著者は「日本書紀」に記述された「猨田彦大神」の容貌に注目します。

鼻の長さは七咫(ななあた、105~158cm)、身長七尺(ななさか、131~198cm)、口の両端が明るく輝き、眼は鏡のようにまるくてホウズキのように赤く光っている、という姿を星の並びとして実際の星空で捜す、しかも「天の八衢→すばる」の近くに、です。

・・・となると、赤く輝く右目をヒアデス星団(畢星)のアルデバラン(牡牛座α星)としたサルタビコノカミが「すばる」のすぐそばに浮かび上がってきます。

畢星も昴星と同様に二十八宿のひとつで、太陽の通り道(黄道)上にあります。東から昇り西へ西へと移動して行く畢星→サルタビコノカミは、太陽神の系譜を持つニニギノミコトの案内役に最適だ、といことです。

ちなみにアメノウズメノミコトはオリオン座に同定しています。その理由も記紀神話をもとに詳細に解説していますので、ご興味をお持ちの方はぜひ『星座で読み解く日本神話/勝俣隆著/大修館書店発行』をご一読ください。
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星座で読み解く日本神話/勝俣隆著/大修館書店/2000年刊
by iruka-boshi | 2016-01-01 12:55 | Comments(0)