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戦い敗れて夜が明けて 金子功著

金子式プラネタリウムの考案者で元・向山天文台主事や東栄町立御園天文科学センター所長などを歴任し、また、山村文化研究所を主宰した金子功氏の終戦前後の回想録です。

「敗戦前後300日の記録」の副題が示すように、昭和20年3月の東京大空襲前後から軍隊が解散する同年11月末までを記録、特に終戦直前・直後の陸軍内部の混乱振りとその後の残務整理の様子に多くのページを割いています。
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著者の終戦時(金子氏は終戦ではなく「敗戦」を強調している)の所属は、名古屋(東海軍管区)の第11野戦輸送司令部の副官で、作戦逐行に必要な弾薬・物資の補給輸送の責任者の立場でした。

本書の内容は大きく二つに分かれていて、第2部の「草薙の剣を飛騨に疎開」は、著者の前記の任務と大きくかかわりを持っていたようです。

第1部、2部の目次を列記します。

第1章 銃後も戦場/飛行機乗りの養成/東京下町の大空襲
第2章 敗戦直前の陸軍/東海軍の組織/当時の私の役割
第3章 本土決戦を前に/わずかに残る人間性/盟友稲垣中尉/深刻な食料不足
第4章 敗戦の前夜/中央の混乱ぶり/輸送隊の解散/見習士官玄永埴
第5章 帝国陸軍の最後/米軍との交流/軍隊と軍旗の最後
終章 夜が明けて/敗戦と市民の表情

第2部 草薙の剣を疎開
第1章 戦前 天皇は神様
第2章 敗戦前の熱田神宮
第3章 熱田神宮と草薙の剣

「軍隊での気勢の上がらない解散に比べると、市民の表情は明るかった。8月15日の夜になると、廃墟と化した名古屋の町に灯火がよみがえってきた。今夜からは「灯火管制」という嫌な言葉がなくなった。・・・その日を境に、お城端を歩いてみると、ボロを纏ってはいるが、明るい表情の市民が散歩している姿が目についた。

名古屋市内でも熱田神宮をはじめ、各地の神社では参拝者が後を絶たなかったが、これは、いずれも遠く外地にある肉親の無事帰国を祈っているのだろう。」(「敗戦と市民の表情」より、一部転記)

著者はかねてより、「暗黒時代が終わって春がきた時には「暗黒時代の幕引の儀式」をこんな方法で行いたいと一人夢に描いて」いて、すべての残務整理が終わった11月末日、明日からは自分の生活に戻れると決まったその日、いよいよ儀式を実行に移した。

つづきます。
by iruka-boshi | 2011-08-16 13:40 | いろんな本 | Comments(0)