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ビワ

今年もビワが店頭に並ぶ季節になりました。

我が庭先のビワの木もたくさんの実をつけ、次々に食べ頃を迎えています。
この時期、田舎道を行けばあちらこちらの庭先や屋敷の隅などに大量の実をつけたビワの木に出会います。ビワの木は剪定をせずに放って置くとかなりの大きさになるので、遠目には黄色の丸い花がいっせいに咲いているように見えます。

当地は「茂木ビワ」の一大産地長崎に近いこともあって、それぞれの庭先のビワの品種はほとんど「茂木」のようです。
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庭先のビワ。
長径4~5センチです。やや小ぶりですが、甘さは店頭ものと比べて引けを取りません。

ビワの原産地は中国の江南地方だそうで、日本列島には非常に古い時代に渡来し、列島西南部の石灰岩地帯などに着生した、とのこと。しかし、この野生種の実は小さく酸味も強いため、ほとんど利用されることはなかったそうです。

果樹として栽培されるようになるのは8世紀ごろからで「正倉院文書」や平安時代の「延喜式」などに記述が見られるものの、依然として利用価値は低く、食用としてはさほど重要視されていなかったように思えます。

・・・が、同じく平安時代の「三代実録」の元慶7(西暦883)年5月3日の条に陽成天皇が宴を催すにあたり、「枇子杷一銀椀を賜う」た、とあるので、饗応に呈するほどのビワもあったのではないでしょうか。あるいは、単なる珍味としてのビワ饗応だったのでしょうか。

現在、店頭に出回っているビワは在来種を改良したものではなく、江戸時代末期(天保~弘化の頃)に中国南部から長崎に伝来した種を茂木村の三浦シオという女性がもらい受け、栽培したことが始まりだそうです。関東南部から中国・四国地方で多く見られる「田中ビワ」はこの茂木ビワの実生から発見されたもので、明治中期から栽培されています。
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花が咲いたようにも見えるビワの木ですが、問題は大きくなりすぎること。我が家では毎年5~6本、枝を落としています。

「枇杷黄なり 空はあやめの花曇り」 素堂
by iruka-boshi | 2011-06-17 13:58 | Comments(0)