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星座物語 村上忠敬著

最初にお詫びと訂正を申し上げます。
6月19日の「大空の神秘」の文中、<「風と光」ではなく、「趣味の理科物語 光と風」>と書きましたが、「風と光」で良い、とのご指摘を頂き、同書の背表紙には縦書きで「風と光」となっている旨のご教示をいただきました。ここにお詫びして訂正させていただきますと同時に、ご指摘ご教示に感謝申し上げます。

本日は、またもや「大空の神秘」のお父さんお勧め本と思われることでしょうが、「村上忠敬著 星座物語」です。

表紙に掲げられた詩は、ヴィクトリア朝のイギリスを代表する詩人アルフレッド・テニスン(1809-1892)の「Locksley Hall」からの引用で、「すばる」の美しさを讃えた一節です。

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表紙に星の詩が載っていることから推察されるように、「星座物語」は、星座の位置やかたちを指し示すだけではなく、季節ごとの主だった星座にちなんだギリシャ神話を紹介するとともに、古今東西の詩歌のなかから星に言及した箇所を選りすぐって引用し、星空と星座そのものの美しさを語った著者異色の星の本です。

冒頭にイギリスの作家カーライルの言葉を引用し、カシオペア座では詩人ジョン・ミルトンの作品に触れ、南十字星や天の川の説明ではダンテの神曲の一節を記し、しし座ではロマン・ロランの戯曲に及ぶという具合に枚挙にいとまがありません。

さらには、唐の詩人杜甫や宋時代の蘇東坡の詩からの引用、あるいは、我が国の頼山陽の漢詩の引用や旧約聖書ヨブ記からの引用など、随所に星空の美しさを語るにふさわしい演出がなされています。

「はしがき」で著者が「この本を書きはじめる際に、当然野尻氏の本を読みかえしこれを参考としたことも多いので、同氏永年の貴重な研究の結果を至る処で拝借する結果となった(中略)野尻氏に対する深甚なる謝意を表する次第である。」と述べていますが、野尻氏とはまた違った趣きの星空賛歌の本となっています。

星座物語 国民科学文庫(11)
著者:村上忠敬
発行所:日本出版社
発行日:昭和24年12月5日
印刷日:昭和24年12月1日 第八版改装印刷
印刷所:岩岡書籍印刷株式会社
12.5×18.5cm/90ページ
全天簡易星図付き
定価50円
地方定価55円
(掲載画像の本は、経年変化で色が褪せていますが、実際はもっと濃い青色です。また、薄れてほとんど見えませんが、表紙には「蝶」や「星」や「顕微鏡」などが描かれています。)

いるか書房本館の「星・宇宙」を更新しました。
by iruka-boshi | 2010-06-25 13:13 | 星の本・資料 | Comments(0)