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ふじい旭の新星座絵図

描かれた星座は全部で88個。つまり全天すべての星座が描かれていますが、ページ冒頭の「はじめに」で

『読者の方々には、この星座の本があまりまともなものでないということを、まずはじめに、思いきっておことわりしておいた方がよいかもしれないという気がしている』

とあるように、この星座の絵姿はよく眼にする星座絵とはかなり趣きが異なっています。・・・と言うのも、伝統的な星座の姿を保ちつつもその中に作者独特のユーモアをちりばめ、新しい神話解釈が成り立つような意表を突く絵姿設定で描かれているためです。
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『新星座絵図』に登場する英雄や怪獣はいずれもかなりデフォルメされています。そのため、「月刊天文ガイド」に10回ばかり『新星座絵図』が掲載された当時、

『若い星仲間からはなぜもっと続けないのかというお叱りを受けたり、年輩の天文ファンの方からは、あれが星座絵の一般的なものだと誤解されては星座絵のイメージがだいなしになって困る』

等々の意見が寄せられ、その反響の大きさに少々とまどった、と作者は「あとがき」で述べています。しかしその後、雑誌掲載の星座以外も描き加えられて1冊の本となり、現在では所有者が手放さないためか入手が少しばかり難しくなっているところをみると、特異な星座絵でありながらも多くの読者に支持されてきた絵姿であったことがうかがえます。
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月刊天文ガイド 1969年9月号掲載/新星座絵図①くじら座 続く10月号はうお座が描かれています。そして、1970年5月号におとめ座、6月号にへび座・へびつかい座が掲載されて都合10回の連載は終了しています。

連載1回目の「くじら座」の絵は単行本化されたときの「くじら座」と少し絵柄が異なっています。へび座・へびつかい座も異なっていますし他にも微妙に違う描写がありますので、単行本化に当たって新たに描き下ろしたのでしょうね。多分・・・。

ユニークな星座絵に加えて、併載のエッセイの面白さも本書の魅力のひとつです。

本を開いて左側のページに星座絵、右側ページに天文エッセイが掲載されていて、星座とエッセイ内容につながりがあるものもあれば、直接にはつながらないものもあります。

また、天文エッセイと仮に名づけても星空や星座や宇宙のことばかりを語っているというものではなく、作者周辺の天文関連出来事や星仲間たちの生態描写に多くのページをついやしていますので、星や星座に関心を抱く読者諸氏は思い当たるところもあって、共感を呼んでいるのではないでしょうか。
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「チロ」を描いた「こいぬ座」のページ 右側のエッセイでは「雪ソリ」と「チロ」のエピソードが語られている。


ふじい旭の新星座絵図
著者:藤井 旭
発行所:誠文堂新光社
発行日:1976年12月25日 第1刷
15.5×19.5cm/169ページ
by iruka-boshi | 2010-06-23 09:39 | 星の本・資料 | Comments(0)